99/2000シーズンから、欧州カップの仕組みが大幅に変わりましたが、これから見る「順位の"節目"」が、各クラブにとって大きな運命の分かれ目となることに変わりはありません。というわけで、もっと楽しめるセリエA順位表の「読み方」を御紹介しましょう。
1)「4位」(欧州チャンピオンズ・リーグの出場権)
欧州カップのシステム変更で、セリエAで2位までに入ったチームは、欧州チャンピオンズ・リーグへの直接参加権、3-4位のチームは予選ラウンドへの参加権を得られることになりました。98/99シーズン1-2位のミラン、ラツィオは本大会の一次リーグに、3-4位のパルマ、フィオレンティーナは8月に行われる予選ラウンド(56チームから16チームが勝ち残り本大会の一次リーグへ)に出場することになります。
チャンピオンズ・リーグは、トーナメント方式のUEFAカップと違い、本大会に参加できれば、最低でも6試合(ホーム3試合)、ヨーロッパで戦うことができます。ペイTV以外での生中継が行われないセリエAとは異なり、欧州カップ戦は全試合一般の地上波TVで生中継(しかもゴールデンタイム)されますから、クラブには、それだけで25億円以上のTV放映権料が舞い込むことになります。更に、欧州カップ戦が世界中で中継されることによってTVへの露出度が高まれば、スポンサー料もさらにつり上げることができます。こうしてクラブの収入はどんどん増えて行くのです。
この、トータルではおそらく40億円を超える収入(ベスト8に勝ち残れば1試合ごとにさらに増える)は、もちろん翌シーズンのための戦力強化に使われます。つまり、4位(チャンピオンズ・リーグ)と5位(UEFAカップ)では、翌年、選手補強に使える予算が、数億円単位で違ってくるというわけです。強いチームを作ろうとすれば、あるいは強いチームであり続けようとするならば、いい選手を揃えるのが一番の近道ですから(実際はそう単純な話ではないのですが)、4位と5位のこの差は後々ボディブローのように効いてくることになります。
2)「6位以内」(UEFAカップ出場権)
チャンピオンズ・リーグの出場枠拡大とカップウィナーズ・カップの廃止により、イタリアには3つのUEFAカップ出場権が割り当てられることになりました。98/99シーズンは、セリエA5-6位の2チーム(ローマ、ウディネーゼ)+コッパ・イタリア優勝チーム(決勝進出2チームがいずれもチャンピオンズ・リーグにエントリーしたため、準決勝で敗退したボローニャとインテルがプレイオフを戦い、前者が勝利)という割り振りでしたが、来シーズン以降、どうなるかはまだわかりません。
いわゆる「ビッグ・クラブ」にとって、ここは最低限死守しなければならない目標です。何よりも、常時欧州カップに顔を出しているというのは、ヨーロッパレベルでトップクラブと呼ばれるための最低条件だからです。
これは、選手獲得にとっても大きな要因です。多くのトップクラスの選手(またはその一歩手前の選手)は、ヨーロッパという舞台で活躍して、自らの価値をさらに高めるチャンスがある「格」の高いクラブかどうかを、移籍先を決める際の判断材料として非常に重視するからです。つまり、UEFAカップにさえも出場できないとなると、有力選手を獲得するチャンスも小さくなってしまうということです。この2年のミラン、今年のインテルくらいになると話は別ですが。
UEFAカップに出場できれば、よほどくじ運が悪くない限り、イタリアのチームならまあ、初戦を突破してベスト16に進むことはできます。これだけで、最低4試合(ホーム2試合)はヨーロッパで戦うことができますから、チャンピオンズ・リーグと比べれば格落ちとはいえ、クラブとしても、かなりの収入が確保できるわけです。これがあるのとないのとでは、翌年のチーム作りが少なからず変わってきます。サポートしているチームがこの辺りの順位にいると、シーズン終盤は非常に気をもむことになります。
3)「8位以内」(インタートト・カップ出場権)
インタートト・カップは、7-8月のシーズンオフ・ヴァカンス中に行われるという極悪コンペティションです。参加するのは、欧州各国の国内リーグでUEFAカップ出場権を得られなかったクラブ(イタリアには2つの枠が割り当てられています)。上位4チームに勝ち残れば、シーズン開幕直前に行われるUEFAカップ予備予選への出場権が与えられます。
本来ならば、カンピオナートに向けてのコンディショニングとチームの基盤固めに費やすべき時期に、この大会を戦うことは、フィジカル面では、来シーズンを戦う上で大きなハンディキャップになります。しかし、出場チームの大半は弱小国のクラブなので、イタリアでこのレベルにあるクラブにとっては、出場すればかなりの確率でUEFA出場権にたどり着くことができることも事実。6位以内には入れなかったけれど、どうしても欧州カップに参加して収入を確保したいというクラブにとっては、その最後のチャンスでもあるわけです。
97/98シーズンまでは、イタリアのクラブはどこもこのインタートトカップの出場権を返上し、イタリアサッカー協会はUEFAから罰金を課されたりしていましたが、98/99シーズンのインタートトはボローニャ(前年8位)とサンプドリア(同9位)―ちなみに7位のラツィオはカップウィナーズ・カップに出場―の2チームが出場。しかし、運悪くこの両チームが準々決勝で当たってしまい、負けたサンプは、ろくにヴァカンスもとらずに7月初旬からシーズンインしていたにもかかわらず、UEFA出場権を逃し、さらにはその後遺症から(!?)カンピオナートでもまったく振るわず、セリエBに転落するという悲哀まで味わうことになってしまいました。本当に気の毒な話です。
この教訓からか、99/2000シーズンのインタートト出場権を得たインテルは出場を固辞。さらにバーリ、ヴェネツィア、カリアリ、ピアチェンツァまでも辞退し、A残留組では最下位(14位)のペルージャにお鉢が回ってきました。ちなみにUEFA出場権を逃したもうひとつのビッグクラブ、ユヴェントスは、クラブ財政重視の立場から、あえてインタートト出場を決めています。
4)「14位以内」(セリエA残留)
日本でよく名前が知られたビッグクラブにはほとんど関係のない世界ではありますが、実は最もドラマチックで熾烈な戦いが演じられているのは、この残留争いなのです。
ご存じの通り、セリエAとBは、毎年4チームが自動的に入れ替わります(来シーズンからは3チームになる可能性もあり)。ですから、このゾーンでの争いは、Bから昇格してきたチームと、A定着を目指すチーム(合わせると10チーム弱、セリエAのほぼ過半数です)とが、文字どおりしのぎを削る戦いになるわけです。勝ちよりも引き分けと負けの方がずっと多いチーム同士が、1ポイントを巡って繰り広げる死闘には、スクデット争いとはまた違ったドラマがあります。
このゾーンにいるのは、ほとんどがセリエAとBを往復している地方都市のクラブです。大都市のビッグクラブのように、何十億円もする外国人選手をポンと買って戦力を強化することが不可能なことはもちろん、主力選手がちょっと活躍したり、監督の采配が評判になったりすると、あっというまにビッグクラブに引き抜かれてしまいますから、たとえ前年に残留を果たしたり、セリエBから破竹の勢いで勝ち上がってきたとしても、前年並みかそれ以上の戦力を調えられるかどうかは、何の保証もありません。
一方、AからBに落ちたら最後、主力選手は他のセリエAのクラブに引き抜かれ、クラブの収入も大幅減、それこそゼロから出直しを図らざるを得なくなります。トリノ、ジェノアといった名門クラブがBで何年も苦戦していることからも、その「出直し」の難しさがわかります。
それだけに、このレベルのクラブにとっては、毎年の監督選びやチーム作りに対する明確なポリシー、下のカテゴリーから有望な選手を発掘したり、ユースからいい選手を育てるといった長期的なビジョン・戦略が大きなポイントになります。そのあたりにまで目を向けつつこの残留争いを追うのは、なかなか高度なセリエAの楽しみ方です。
今シーズンは、サレルニターナ(50年ぶり)、ヴェネツィア(32年ぶり)という久々の昇格組に、1年でBから復帰したカリアリ、ペルージャを加えた4チームがセリエA昇格を果たしています。今年の残留争いは、ここにエンポリ、ピアチェンツァ、バーリ、ヴィチェンツァといった地方の中小クラブが加わって展開されることになるでしょう。上位の争いばかりでなく、こちらの熾烈な戦いにもぜひ注目してみて下さい。個人的に、デリオ・ロッシ監督率いるサレルニターナは、かなり善戦しそうな予感がしているのですが...。
