イタリア通信058:ミランvsラツィオ

(05.1999)



 5月15日に行われたセリエA第33節、1ポイント差で首位を保っていたラツィオがフィレンツェで引き分け(1-1)、2位のミランはサン・シーロでエンポリを4-0と一蹴し、あと1試合を残す時点で、逆に1ポイント差で首位に躍り出た。1ヶ月前の本稿は「ラツィオvsミラン」というタイトルだったが、そういうわけで今回は「ミランvsラツィオ」である。

 ミランは、最終戦のペルージャ戦(アウェイ)に勝てば優勝決定。一方のラツィオは、ホームでパルマを下した上で、なおかつペルージャがミランからポイントをもぎ取らない限りスクデットには届かない。この点から見ればミランが優位に立っていることは間違いない。とはいえ、そのミランにしても、A残留を賭けて必死のペルージャを倒さない限り、ラツィオに再逆転を許す可能性は十分ある。
 ともかく、残るはわずかあと1試合。1ヶ月前と同様、今回もこの2チームの状況をいくつかの視点から見てみることにしよう。とはいえ、前回とはちょっと趣向を変えて、最終戦をめぐる環境的要因に焦点を当てることにしたい。

1) 試合に向けた準備

 土曜日の試合を終えた後、ミランのザッケローニ監督はチームに2日間の休養を与えた。月曜日は任意参加のゴルフ・コンペまで開催(優勝はビアホフとガンツ)。十分リラックスした後、火曜日から通常通りの練習を再開。日曜日の試合に向けて万全の体制で臨む。ただし、長い追撃を経てやっとトップに立っただけに、「失敗への恐怖」も大きいはず。
 ラツィオは、1日休んだ後、水曜日のカップウィナーズ・カップ決勝に向けて練習を再開。バーミンガムに移動し決勝を戦った後、ローマに戻るのは木曜日になる。ミランとは対照的な緊張の1週間。こちらはもはや開き直って戦うしかない状況。

2) クラブ首脳の発言

 ラツィオのクラニョッティ会長は、引き分けに終わったフィオレンティーナ戦で明らかなPKを取ってもらえず、逆にフィオレンティーナに疑わしいPKが与えられたことで、極端にナーヴァスになっている。
「またしても審判の誤審でシーズンが左右されようとしている。いずれにしても我々は、我々自身の手で、我々にこそ相応しい優勝を勝ち取るだろう。ラツィオはミラン以上にスクデットに値するチームなのだから」(土曜日・フィオレンティーナ戦直後)
「今日ラツィオの株は取引停止になるまで暴落した。審判の判定は私だけではなく、ラツィオの株主すべてに損害を与えている。メディアセット(注:ベルルスコーニ傘下の全国ネット民放局)はミランのことばかり取り上げ、ラツィオを取り上げようとはしない。ミランはメディアまで使って自分に有利な環境を作り出そうとしている」(月曜日)

 一方のミラン、ガッリアーニ副会長は余裕の発言。
「ミランもラツィオも、もし優勝を逃したとしても、最後に残るのは、チャンピオンズ・リーグという舞台を勝ち取った満足感の方だろう。この素晴らしいシーズンをつまらない愚痴で壊すことはない」(土曜日)
「私は毎週月曜日、どのチームが審判の判定で損をし、どのチームが得をしたか計算するのを楽しみにしている。今までのところ、ほとんど全部のチームが、プラスとマイナスを相殺している。明らかに損をしているといえるのはローマくらいだ。審判の判定ひとつでスクデットを逃した、などとは言わない方がいい」(火曜日)

3) 対戦相手の状況

 ミランと当たるペルージャは、この試合でポイントを取らない限り、B降格の可能性が濃厚(ピアチェンツァ-サレルニターナの結果にもよる)で、全力で勝ちに来ることは必至。しかもホームではここまで10勝3分3敗とビッグクラブ並みの好成績。たとえミランといえども簡単に勝てる相手ではない。

 ラツィオの相手・パルマは、コッパ・イタリア、UEFAカップの二冠を勝ち取った上に、すでにチャンピオンズ・リーグ出場権も手にしており、最終戦は消化試合。もちろん無様な試合はできないが、モティベーションには雲泥の差がある。

4) 対戦相手との関係

 ラツィオのクラニョッティ会長とパルマのオーナー、カリスト・タンツィは、本業の食品業界ではビジネス・パートナーで、数ヶ月前にはクラニョッティがタンツィにローマの乳業会社を売却したばかり。移籍マーケットでもつながりが深く、昨年はフゼールがパルマに移籍、来シーズンはヴェロンとスタンコヴィッチの交換トレードがささやかれているなど、関係は良好。

 ミランは96/97シーズン、最終戦でペルージャをB降格に追いやっており、ペルージャにとっては仇敵のひとつ。
 ちなみに、ラツィオ/パルマ、ミラン/ペルージャとも、双方のウルトラスには対立関係も友好関係もない。

5) スタジアムの環境

 ペルージャのスタディオ・レナート・クーリは2万6000人収容。ミランに渡ったチケットは5000枚だけで、スタンドがビアンコロッソに染まることは間違いない。ペルージャ・サポーターの熱さはイタリアでも屈指、ミランにとって大きなプレッシャーになることは間違いない。チケットを持たないミラン・ウルトラスがペルージャに乗り込み、ひと騒ぎ起きる可能性も大。

 ローマのスタディオ・オリンピコは8万3000人収容。チケットはすでにソールド・アウトで、少なくとも7万5000人のラツィアーリがスタンドを埋めることになる。パルマ・サポーターも多少は乗り込むことになるが、どちらかというと遠足気分。

 試合を巡る環境に限って見れば、むしろミランの方が厳しい戦いになるといえるかもしれない。とはいえ、このペルージャ戦を勝てないようでは、ミランにスクデットの資格がないことも事実(これはラツィオにもいえることだが)。ともかく、泣いても笑ってもあと90分、である。 
 

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