イタリア通信078:1/4を終えたセリエAをめぐって
(11.1999)
先週までで9節を終え、代表ウィーク(欧州選手権予選プレーオフ)のため1週間の休みに入ったセリエA。ちょうどチャンピオンズ・リーグとUEFAカップも一区切りついたところなので、今回はここまでの動向を簡単に総括してみたい。
セリエA順位表(第9節まで)
21 ラツィオ
18 ユヴェントス
17 ミラン
16 ローマ
15 パルマ
14 インテル
13 ボローニャ
13 ペルージャ
12 ウディネーゼ
11 トリノ
11 レッチェ
10 バーリ
10 フィオレンティーナ
9 レッジーナ
8 ヴェローナ
6 ピアチェンツァ
5 カリアリ
5 ヴェネツィア
例年、シーズンも1/4を過ぎたこの時期になると、一、二の例外を除き、それぞれのチームが収まるべきところに収まるのが常。その意味では今シーズンも、順位的に見て、とりわけ大きな波乱はないようにも見える。
しかし、ポイントという観点から見ると評価はまた違ってくる。今シーズンのセリエAの特徴が、戦力的にかつてないほどの「二極分化」が進んだ点にあることは、これまでもたびたび触れてきた通り。しかし、少なくともここまでのところ、各チームのポイント差にはそれが顕著に表れているとは言い難い。
事実、内容的に見て、開幕から順調かつコンスタントな歩みを見せているのはラツィオくらいのもので、それ以外のビッグクラブは、それぞれ解決すべき問題を個別に抱えながら、なんとか帳尻を合わせつつ、毎週のカンピオナートをしのいでいるのが現状である。
これから冬休み(12/19-1/6)までの5試合には、重要な直接対決が数多く組まれている。ここをどうしのぐかによって、「セブン・シスターズ」の中からそろそろ「脱落組」が出てくる可能性もあるだろう。以下、いくつかのチームを取り上げてその現状と問題点を整理してみよう。
ここまで唯一順風満帆と言っていいラツィオや、浮き沈みの激しいミラノ勢の陰に隠れて、例年になく話題になることが少ないユヴェントスだが、気がついてみると、いつの間にか2位に浮上している。レッチェ、バーリという「格下」相手の取りこぼしはあるものの、中盤のキープレーヤー、ダーヴィッツを欠いていた上に、インザーギ、デル・ピエーロ、ジダンの攻撃陣がいずれもトップコンディションとはいえない現状を見れば、これは予想以上の健闘といってもいいだろう。
ここまで10得点(リーグ10位)5失点(ダントツのリーグトップ)という数字を見てもわかるとおり、この成績を支えているのは、開幕前に不安視されたディフェンス陣の頑張り。得点機は作るものの、フィニッシュが決められずに接戦を強いられ、何とかリードを守り切るという戦いが続いている。
あえて肯定的に評価するならば、実質的には就任1年目といっていいアンチェロッティ監督は、まずチームを支える守備システムの構築に重点を置き、その人柄通り、地味ながら着実に成果を挙げている―とすることもできなくはない。
しかし、今年のユーヴェが本当にスクデットを争えるチームなのかどうかが問われるのはこれから。冬休みまで5試合、ミラン、ラツィオ、ボローニャ、インテル、フィオレンティーナと、まったく息の抜けない相手との戦いが続く。ここでトップ争いから脱落するようだと、内容的には消化不良の試合が続いているだけに、要求水準の高いマスコミやティフォージから批判が巻き起こる可能性も小さくはないだろう。要注目、である。
チャンピオンズ・リーグのガラタサライ戦で、2-1とリードし勝ち残りの権利を手にしながら、最後の4分で逆転を許すという文字通りの「自殺行為」を演じたミラン。CL2次リーグへの勝ち残りはもちろん、UEFAカップへの出場権さえ失ってしまったこの敗戦で、せっかくの100周年記念ユニフォームの使い途がなくなってしまったばかりか、クラブの財政も50億円規模の大損害を被ることになった。さらに、親会社の放送局・メディアセットも、約100億円を投じてチャンピオンズ・リーグの地上波独占放映権を獲得しながら、肝心のミランが舞台から姿を消してしまうという笑えない事態に陥っている。
ここに来て指摘されているのは、ミランが昨シーズンのスクデットを過信し、2つのコンペティションを戦い抜くために十分な補強を行わなかったのではないか、ということ。
特に槍玉に挙がっているのは、チャンピオンズ・リーグでも致命傷となったディフェンス陣の層の薄さである。33歳のコスタクルタ、31歳のマルディーニに毎週2試合のフル出場を強いるのは事実上不可能であるにもかかわらず、その穴を埋めるべきンゴッティ、アジャラが相次ぐミスでディフェンスに穴を空け、昨年は「当たり年」だったサーラも今年は不振。補強不足云々は結果論に過ぎないかもしれないが、ディフェンスが機能せずしばしば不用意な失点を喰らっていることは確かに事実である。
一方、セリエAではラツィオ(23得点)に次ぐ21得点を挙げている攻撃陣にも、問題がないわけではない。縦へのスピードを生かしたカウンターが身上のシェフチェンコ、ウェアが、前方のスペースへのパスを必要とするタイプなのに対して、ビアホフを生かすためにははサイド深くからのクロスが不可欠。まったく違うタイプの「組み立て」を要求する彼らを同時に使うことは非常に困難なのだ。
このところザッケローニ監督は、ビアホフを外し、シェフチェンコ、ウェアの下にジュンティorレオナルドorボバンを置く3-4-1-2を採用するケースが多いが、これも十分に機能しているとは言い難い(ジュンティはキャラクターが異なるし、後の2人はコンディション不良)。
欧州カップの負担がなくなり、じっくりとチームを仕上げる余裕ができたことは、ザッケローニ監督にとってプラスだが、「これでカンピオナート以外に目標がなくなってしまった」という彼の言葉に、3年前のチャンピオンズ・リーグでローゼンボリに敗れ、まったく同じ言葉を発した当時の監督・サッキの姿が重なるのは杞憂だろうか(その後の顛末はご承知の通り)。ここから、ユーヴェ、パルマ、フィオレンティーナ、トリノと続く4試合でその答えの幾分かが明らかになることだろう。
さて、序盤で大きく躓きながらこの5試合を4勝1分で乗り切り、一気に上位に食い込んできたパルマ、監督交代(ブーゾ→グイドリン)とアンデションの復帰でやはり急速に上昇しつつあるボローニャにも注目したいところだが、ここは、「中小クラブ」勢の中で最も目覚ましい活躍を見せているペルージャにスポットを当てないわけにはいかないだろう。
あのガウッチ会長も一目置かざるを得ないヴェテラン、マッツォーネ監督を迎え、バ、アモルーゾという(ペルージャにしては)「大物」を開幕後に補強したことで、残留争いのライバルからは一歩抜きんでた戦力を獲得したこのクラブ。
4人か3人か、まだフォーメーションの固まらないディフェンスに問題を抱えてはいるものの、今や誰からもビッグクラブでも十分通用するという評価を受けるまでに成長した司令塔・中田が演出する攻撃は、昨シーズン、マッツォーネ監督が率いていたボローニャのそれを彷彿とさせる鋭い切れ味を誇っている。
課題だったアウェイでの戦いぶりにも、ホーム同様のアグレッシヴさが見られるようになってきただけに、中盤で数的不利に陥りがちな上にまだミスの多いディフェンスが整備されて来れば、ウディネーゼ、ボローニャとともに、UEFA 圏内を脅かす存在になる可能性もあるのではないか。
とはいえ、前節のバーリ戦でも明らかなように、攻撃における「中田依存度」が高すぎるところがネックではある。まあ、昨シーズン後半のヴェネツィアがそうだったように、「中小クラブ」が予想以上の躍進を遂げるためには、突出したヒーローの存在が不可欠なこともまた事実だが…。
最後に「オマケ」として、そのバーリ戦の試合後に起こった一連の騒ぎについて少し。
きっかけとなったのは、試合後、報道陣の集まる関係者出入り口で、ガウッチ会長がその日の笛を吹いたペッレグリーノ主審に向かって、判定(オリーヴェへの肘打ちを見逃す)に露骨な皮肉を浴びせたこと。それを見たバーリのマタレーゼ会長が、わざわざ一旦乗り込んだバスの扉から乗り出して挑発したことで、ガウッチが「キレて」しまったわけだ。しかし、いくら売り言葉に買い言葉とはいえ、マタレーゼが審判を買収したと一方的に決めつけ、誰もが顔を赤らめるような放送禁止用語を連発したガウッチの行動が、セリエAのクラブの会長として著しく品位を欠くものであったことは誰の目にも明らか(TVカメラはこの騒ぎのすべてをテープに収めており、その後少なくとも20回はガウッチの「暴言」がイタリア中に放映された)。
マスコミの論調も、審判の判定に異議があったり、審判買収の疑惑があるのなら、然るべき手続きを踏んで協会に提訴するべきであり、当の審判や相手チームの会長をつかまえて、品位のかけらもない罵り合いを演じるなど言語道断、そんな会長にはウルトラスの暴力を批判する資格すらない、という厳しいものである。
ガウッチ会長は、翌日のTV番組にゲスト出演した際にも、「あんな言動を恥ずかしいとは思わないのですか」というジャーナリストの問いに、反省するどころか、「私を侮辱したのはマタレーゼ氏の方だ。もしあの場面に戻ったら、私は100回でも同じことを繰り返す」と開き直って息巻いている。それに対する周囲の反応はというと…、もちろん失笑以外にはないのであった。
ちなみに、イタリアでは今年から、試合中の非紳士的行為についてのみ、TVリプレイによる事後判定が導入されているので(ペルージャのバが頭突きで4試合の出場停止処分を受けたのもこれによる)、オリーヴェに肘打ちを喰らわせたインノチェンティも、いずれにせよ数試合の出場停止処分を受けることになるはずである。
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