イタリア通信087:セリエA後半戦展望

(01.2000)



 1月23日の第18節から後半戦に突入したセリエA。開幕から全体の1/3を終える辺りまではそれほど明確とはいえなかった、ビッグクラブと弱小クラブの「二極分化」の傾向も、前半戦を終えたこの時点になってみると、予定調和といっていいほどにはっきりと表れてきた。以下は、後半戦最初の第18節も含めた最新の順位表。

セリエA順位表(第18節まで)


39 ユヴェントス    
36 ラツィオ
35 ローマ
32 インテル
32 ミラン
32 パルマ
26 バーリ
25 ウディネーゼ
24 レッチェ

23 ボローニャ
23 ペルージャ
22 フィオレンティーナ
20 トリノ
17 レッジーナ
16 ヴェローナ
15 ヴェネツィア
11 カリアリ
11 ピアチェンツァ

 「セブン・シスターズ」の中では唯一フィオレンティーナが完全に脱落したが、それ以外の6チームは健在。7位以下との間には大きな溝ができており、実質的に、これからの後半戦は6チームによる「セリエA1」と残りの12チームによる「セリエA2」という2つのリーグが戦われるといってもよさそうな雲行きである。

 事実、前半戦終了時点で「A1」と「A2」の成績を比較しても、その格差は歴然としている。17節までの全153試合に関するいくつかのデータを挙げてみよう。

  • 「A1」の6チームが挙げたポイントは195、数の上ではその倍になる残り「A2」の12チームは合わせて196ポイントと、まったく変わらない。

  • 総得点378のうち、「A1」の6チームが挙げたゴールは184(全体の48.6%)に及ぶ。残りの12チームを合わせても、それより10多い194得点を挙げているだけ。

  • 勝ち星は「A1」が55勝(ホーム37/アウェイ18)、「A2」が53勝(ホーム40/アウェイ13)。「A1」の6チームがホームで敗れたのは3試合だけ(パルマ1-2ラツィオ、ローマ0-1ユーヴェ、インテル1-2ミラン)、しかもひとつはダービー。アウェイでの“ジャイアント・キリング”は皆無。
  •  要するに、7位以下の12チームが束になってかかって、やっと「6人姉妹」の叩き出した数字に釣り合うという構図である。上の順位表を見ても、トップのユヴェントスと最下位のカリアリ、ピアチェンツァのポイント差は28ポイントにも及んでいる。昨シーズンの第18節時点では1位フィオレンティーナ(38)と最下位エンポリ(16)の差は22ポイント。しかもエンポリは八百長疑惑でー2ポイントのペナルティを受けていたので実質的には18ポイントを稼いでいたから、上下の格差は1.4倍にも拡大していることになる。

     確かに、この時期になってスクデット争いに6チームが絡むという展開は過去にもあまり見られなかったエキサイティングな接戦だが、全体として見れば、ひとつのカンピオナートとして成立しうるに足るバランスが崩れつつあることもまた事実といわざるを得ない。

     象徴的なのは、この1-2年、下降線を辿っていたトトカルチョの売上げが、今シーズンにはいって更に急激に落ち込んでいること。売上げが右肩下がりになった背景には、ちょうど同じ時期に「スーパーエナロット」という非常に射倖性の高い数字当てくじがスタートし、一攫千金を夢見る庶民の掛け金がそちらに流れたこともあるのだが、急激な落ち込みの理由はもちろんそれだけではない。今シーズンは毎週の当選額が以前と比べて明らかに低くなっているのだ。これはもちろん、結果がたやすく予想できるカードが増えており、結果的に13、あるいは12を当てる人数が増えているため。カンピオナートから「意外性」がどんどん失われつつあるというわけだ。
     
     実際、これまで何度か「中堅クラブの未来」というタイトルで取り上げてきたように、かつてセリエAで最も層が厚かった「中堅クラブ」の多くは、セリエA下位からセリエB中位までを包含する「中小クラブ」とでも呼ぶべきカテゴリーに取り込まれてしまっているのが現状だ。

     「ビッグクラブ」として生き残ったのはフィオレンティーナ、ローマ、ラツィオに純粋な新興勢力といえるパルマを加えた4つだけ。ナポリ、サンプドリアはセリエB。ボローニャ、トリノも這い上がっては来たものの、「新・中堅クラブ」としてセリエAに安定して定着するまでには至っていない。
     なにしろ、「セブン・シスターズ」以外で過去5シーズンセリエAに定着しているのは、それぞれ特徴ある、しかし対照的なチーム作りの路線で努力を続けているウディネーゼ(外国人選手の青田買い)とピアチェンツァ(イタリア純血主義)だけなのである。

     このまま事態が進んでいくとすると、こうしたクラブの取り組みが実を結ぶよりも、「ヨーロッパ・スーパーリーグ」が文字通りの形で、つまり欧州各国のビッグクラブによる年間を通した総当たりのリーグ戦という形で実現する方が早いのではないか、という気さえしてくる。
     
     最後に、気を取り直して後半戦の見通しにも少し触れておこう。

     現在トップに立っているのは、シーズン前の下馬評ではダークホースがいいところだったユヴェントス。気がつくとそこにいた、という感じでトップに立つと、ラツィオの躓きにも助けられて3ポイント差までリードを拡げてしまった。
     しかも、これからの4試合はカリアリ、ウディネーゼ、レッチェ、ヴェネツィアと比較的楽な相手が続く。他の5チームはいずれも最低1試合は直接対決を抱えており、潰し合いも予想されるだけに、ユーヴェにとっては逃げを打つ絶好のチャンスである。

     逆の見方をすれば、ここからの数試合でポイントを落とすようだと、終盤戦に固まる直接対決が苦しくなる、ともいえる。昨シーズンのラツィオがスクデットを逃した大きな原因が、サレルニターナ、ヴェネツィア、エンポリにアウェイで敗れたことにあったように、引き分けが最も順当な結果である直接対決よりもむしろ、下位との戦いでいかにポイントを落とさずに済むかが、最終的にリードを確保できるかどうかの大きな分かれ目なのである。もちろんこれは追う立場にある他の5チームにもいえることだろう。
     
     その5チームのうち、それぞれトップから3ポイント、4ポイントのラツィオ、ローマは当然「スクデット圏内」と言っていいのだろうが、残る3チーム(パルマ、ミラン、インテル)とユーヴェとのポイント差は7。これはかなり微妙な数字である。

     確かに昨シーズンは、29節までラツィオと7ポイント差あったミランが、最終的に逆転でスクデットを勝ち取っている。しかし、統計的に見ればこれは例外といっていいケース。少なくともこれ以上差が広がるようだと脱落の危険も出てくるし、直接対決に勝って相手を蹴落とさなければトップには迫れない。
     特に、5つの直接対決のうち4つがここからの7試合に固まっているインテルは、早くもシーズン総決算の時期を迎えたと言っていいだろう。引退説まで取り沙汰された先週から一転、ヴェローナ戦のゴールで手のひらを返したように復活がもてはやされているロベルト・バッジョの出番、かもしれない。
     

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